『不安な個人、立ちすくむ国家』を読んだ感想

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経済産業省の役人が書いた資料が話題だったので読んでみた。
不安しか無い日本なのに、解決する政策は示されていない。だから新しい社会システムを提案する、という内容の資料である。

日本は不安と不満ばかり

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  • ウチの会社ブラック企業なんじゃ…
  • 何でもかんでも自己責任にされる
  • いつまで終身雇用やってるの
  • 政治は上級国民しか見ていない
  • 年金支給が71歳から…本当に払う気があるの?

口を開けば不平不満ばかり。明るい話題は何もない。来るべき高齢化社会への対策なんて何一つ示されておらず、政府も将来世代に丸投げする気で、とにかく今だけをやり過ごそうとしている。全てが先送り。そのうち年金支給が80歳とか100歳とかになる時代がくる。

昭和で止まっている日本社会

昭和時代の終身雇用制度が崩壊しているのに正社員絶対主義が崩れない。新卒で就職して結婚する。マイホームを買い子供を育てる。昭和時代で当たり前とされていた人生設計モデルを実現させられるのは公務員と正社員だけになった。政府が生み出した官製ワーキングプアは今や被差別階級にあり、結婚を認められなくなった。結婚率が下がったのは若者のせいではなく、政府の責任である。少子化対策など口ばかり。現実は非正規を増やし少子化を推し進めている。一度非正規に転落すると這い上がるのは不可能。その原因は形骸化した終身雇用制度にある。勤続年数に応じて給料を上げるシステムが残っているので、人件コストを抑えるために安く雇用できる新卒を雇う。その新卒は3年以内で3割が辞めている。

なぜ日本は変われないのか

これは単純で、政治家が日本を変えようとしていないからだ。自分が神だと勘違いしている大臣や、公私混同する大臣を見ればわかるだろう。大事な税金を使って国会でしょうもない言い争い。それが政治に関する議論なら分かるが、ただ「悪いことしてる政治家は今すぐヤメロ!」と言っているだけ。庶民を知らない世襲政治家は上級国民の世界しか知らない。だから自分たちの利権を守り抜くことしか考えない。

行き過ぎた労働に疲弊する日本人

このグラフは笑ってしまう。実質GDPが伸びているのに満足度が下がっている。

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仕事を通して自己実現し、幸せを感じられる時代ではなくなった。労働は金銭を得るための苦行だと考えている日本人が何と多いことだろう。企業貢献よりも個人を優先する若手社員がトンデモなど言われているのが象徴的だ。会社への愛はもとより無く、自分が生きるために仕方なく働いているだけ。それは労働全体がブラック化しているからだろう。

労働がブラック化している原因は、9割の一般国民が搾取され1割の上級国民が肥える日本のシステムである。ほとんどの企業は上級国民や大企業のために苦しめられている。

生活満足度が低い理由に、好景気をまったく実感できないことがある。税金や物価はどんどん上がり、ただ国から奪われている感覚しかない。払っている税金がちゃんと還ってくるのかと思いきや、年金が支給されるかも分からない始末。格差社会は政治のせいで、もう止められない。国のルールを決めているのは上級国民の政治家なのだ。自分たちが損をするような改革をする訳がない。

不景気を実感する就職活動

昨日、ツイッターのフォロワーさんが「転職活動してるのに合否結果の連絡がない」と激怒していた。私も先月、アルバイト応募に履歴書を送ったが連絡もなく放置された。なぜ企業がこんないい加減になっているのだろうか。

私が大学を卒業した2000年代は、就職活動で筆記試験を受けに行っただけで電車賃がもらえた。机の上に千円札が入った封筒が置かれていた。「採用試験を受けに来てくれてありがとうございます」という意味なのだろう。今の時代、応募者に感謝してお金を渡している企業があるだろうか。感謝どころか履歴書を送り返すこともしていない。大事な個人情報を送っているのだから、不採用なら送り返すのが当然だと思われる。履歴書を返さないような糞企業に採用されなかったのは幸運だと考えるべきだが、個人情報保護の面で、応募者に履歴書を返さないのは如何なものか。それ以前に面接の結果を連絡しない企業とは何なのか。

こういった糞求人が増えているだけなのに、求人倍率が上がっているとか売り手市場だとか言われても納得はできない。売り手市場なら応募者を蔑ろにするはずがない。つまり企業に余裕がないのだ。

おわりに

エリート役人がこういう日本を憂く資料を作ったのは面白く、不安を感じているのは自分だけじゃないと安心した。それと同時に、エリート役人でも日本の将来が終わっていると感じている現実に頭を抱えてしまう。日本で一番賢い人たちがそう言うのなら、もはや日本で暮らすのは泥舟に乗るようなものなのだ。アメリカあたりから強制的に改革されるか、破天荒な革命家が現れるか、そうでもしないと日本は変わらないだろう。

【参考資料】
不安な個人、立ちすくむ国家
~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~
http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/pdf/020_02_00.pdf