タイトルが気になって映画『ちょっと今から仕事やめてくる』を観てきました。感想をちょっとだけ。ネタバレのほうは控えます。
あらすじ
青山隆(工藤阿須加)が働く会社は、部長が出社すると部下は全員総立ちで挨拶。朝礼でラジオ体操を行ったあと「遅刻は罰金」「有給はいらない」「上司の指示は神の指示」など気の狂った社訓を絶叫。残業は毎月150時間。パワハラ部長が激しいノルマと殴る蹴るの暴行で部下を支配するブラック企業です。
疲れきった隆が電車に飛び込もうとしたとき、謎の男・ヤマモト(福士蒼汰)が隆を救う。ヤマモトの破天荒な行動は隆を勇気づけていく。彼は何者なのだろう。正体が気になった隆がインターネットで名前を検索すると、ヤマモトは3年前にブラック企業に追い詰められ、飛び降り自殺をしていた---。
感想
序盤はブラック企業がやりそうなパワハラの嵐で胸が締め付けられました。ブラックの理不尽さや上司からのパワハラを知っている人なら自分の体験を思い出すことでしょう。
主人公が謝罪させられるシーンが多く、特に「てめえはいるだけで損害を出してんだ!全員に土下座して詫びろ!!」と部長に許されるまで土下座を続けるシーンはキツいです。
社員全員の前で土下座強要なんてさせられた瞬間に辞めますね。その前に上司に暴力を振るわれた時点でやり返しそうですが…。
初めての会社では上司の言うことは絶対正しいと盲信してしまいがちです。僕もかつて、他人のミスを自分のせいにされました。冤罪です。クソ上司から「あのなあ、俺が◯◯さんとお前のどっちを信じられると思うんや」と吐き捨てられ、悔しかったです。
ブラック企業で疲れ果て、周りが何も見えなくなったときに思い出してほしいことがあります。悲しむ人はだれなのか。あなたを必要としている人は近くにいませんか。それが本作では描かれています。若い人に見てもらいたいです。
一番印象に残ったシーン
僕がブラック企業で働いていたとき、毎日の通勤中に見ていたのは自分の靴でした。あまりの絶望で前を向いて歩く元気もなく、ただ絶望と靴だけが目の前にありました。
隆がカートに乗って転び、「久しぶりに空を見た」と言うシーンがあります。いろいろ泣けるシーンはあったのですが、僕は自分の体験と重なったこのシーンが最も印象に残りました。
ブラックに追い込まれると空を見る余裕さえなくなるので、気持ちがよく分かりました。
やめるか、仕事変えたらどうや
ブラック企業という言葉が世に出て何年経ったでしょう。状況が改善されているとは思えません。日本の労働体質は何十年も前からブラックだからです。最近ようやくドラマや映画でも「ブラック企業」が言葉として取り上げられるようになった気がします。
歯を食いしばりながら正社員の椅子にしがみつくのも一つの生き方ですが、精神を病んでしまっては意味はありません。「平日は仕事して寝るだけ」の仕事ならやめるか転職を考えたほうがいいです。
映画でこのような会話がありました。
「なんでそんなに正社員にこだわるんや」
「それは、安定してるし、転職だって厳しいし、結婚もできないし」
「オマエは自殺しようとしてたんやで、心配する順番がおかしないか?」
自殺しようとしてた人が結婚の心配をしているなんて変な話ですね。
仕事をやめても「前の職場に戻りたい」と思うことはまずないです。自分がやめたくてやめたのだから後悔するわけがありません。
後悔しない生き方を---
『ちょっと今から仕事やめてくる』は、そういうメッセージを伝えてくれる作品です。